風早小夜子のブログ

本の紹介とか。漫画の紹介とか。考えてることとか。いろいろ。

【第19話】おかざき真里『&』一人で越えるのがしんどい夜に。

こんにちは。

 今朝、というか昼は、久しぶりに死ぬほど仕事に行きたくなくなったのですが、なぜでしょうか。okapです。

なんとか這い出して行きました。

こういう日は、逆に早い時間にお客さんに来てもらった方がいいですね。

喋ってるうちに、気が紛れました。

 

 

とはいえ、帰り道、しんどいことには変わりなくて。

ひたすら、おかざき真里さんの『&』を読んでいました。

なんでしょう、自分よりも疲れている人を見ると、少し安心するような。

お化け屋敷で、自分より怖がってる人がいると、逆に落ち着く、みたいな。

違うかな。

 

 

&(アンド) (1) (FEEL COMICS)
 

 

 まずそもそも、おかざき真里さんの絵を見てるだけで、落ち着くんですよね。

とても、水分とか湿気を感じる。

登場人物の心に触れられそう。

そんでもって、漫画でしかできないことをしてるように思うんです。

言葉だけじゃなくて、背景に描いてあるモチーフとか、比喩とか、全てに意図があるような。

無駄なことは一切ない、そういう美しさを感じます。

だからでしょうか。その美しさに触れるだけで、心と頭のネジがふっとゆるむような気がします。

 

 

もちろん、お話も、ものすごく好きです。

登場人物の一人ひとりが、物凄く、かっこよくて、かっこわるい。

それぞれのかっこわるいところも見せてくれるので、全員、愛おしいなあと思います。

 

 

皆がどうか、自分の納得のいく人生が送れますように。

【宣誓】文学賞に応募することを誓います。

こんにちは。

非常に眠いので、紹介したい本はあるにも関わらず眠りに落ちそうです。okapです。

 

本の紹介は明日にまわしつつ、今日は、決意が鈍らないうちに、宣誓をしておきます。

 

 

宣誓、私は、小説家になるまで、足掻き続けることを、誓います。

 

 

作家になりたいと思ったのは、小学生の頃。

13歳のハローワークを読むと、「最初から目指すものではない」とか書いてあって、絶望した記憶があります。

でも、諦めきれない。今でも憧れです。

 

 

だったら、自分に才能がないなんてカッコつけずに、

哀れな姿を晒すのを、みっともないとも思わずに、

まずは書くところから始めます。

 

 

とはいえ、このブログを始めたあたりに足慣らしとして一本書いてるんですよね。

祖父母宅の猫を中心にした、丸ごと身内ネタなので、公開するつもりはありませんが。

 

今は、全く関係ない、別の話を少しずつ書いています。

原稿用紙でいうと、現在30枚ぐらいです。

10月末に締め切りの、女による女のためのR-18文学賞に応募するつもりです。

www.shinchosha.co.jp

性別が女である自信はありますが、R18要素が入るかどうかは未定です笑

応募先を取り敢えずこれにしたのは、手頃な締切日と、

なんといっても選考委員に、敬愛する辻村深月さんがいらっしゃるんですよ!!

最終選考まで行かないと、ご本人には読んでもらえませんがね。

 

 

まずは、一作書き上げられるのか。

果たして、締め切りに間に合うのか。

そして、一次選考は通るのか。

 

 

箸にも棒にも引っかからないとしても、

自分の頭の中身が名作だと信じて動けないよりは、

現実を思い知って、新しい作戦を立てられるでしょう。

 

と、信じています。

 

では、少しだけでも書き進めてから寝ます。

おやすみなさい。

【第18話】原田マハ『楽園のカンヴァス』大切なものを、誰かに伝えたい人へ。

こんにちは。okapです。

台風に震えながら過ごしたサプライズ休暇も終わろうとしています。

結果として、私の住んでいるあたりは何ともなかったですが、実家のあるあたりが停電・断水で大変そうです。

実家から徒歩5分の祖父母宅は無事なようですが。

 

一刻も早い復旧を祈りつつ、今日は、原田マハ『楽園のカンヴァス』の紹介です。

読もう読もうと思いつつ、手が出てなかった作品なので、うれしい。

 

 

 

 

2000年の倉敷から物語は始まり、1983年の出来事が語られてから、舞台は再び2000年に戻って幕を閉じます。

全体を通して感じるのは、圧倒的な熱量。

登場人物が、そして、原田マハさんが、どれだけルソーを愛しているか。

しみじみと伝わってきます。

そして、その愛が不器用ながら、次の世代にも受け継がれようとしている。

 

 

彼らの生きていた時代、1910年。

その頃生まれた人がいたなら、108歳。

美術史を変えたような人たち、今となっては、重鎮のような顔をして美術館に収まっている彼らが、必死でもがいて新しいものを作り出そうとした時代が、思ったよりも最近だということにも驚きます。

 

 

今、私は、現代アートはよく分からないと思ってしまうけど、ルソーだって、ピカソだって、世界からなかなか理解されなかったんだもんね。名だたる画家も、きちんと評価されたのは、死んでしまってからということもしょっちゅうある。

それでも、その絵に衝撃を受けて、価値を信じて、守って、伝えてきた人がいたからこそ、今の私たちが目にすることができるということが、改めて幸せだと思いました。

 

プーシキン美術館展、行きたいなあ。

【第17話】柚木麻子『ランチのアッコちゃん』疲れて何もする気がおきない人へ。

こんにちは、okapです。

昨日は会社がなくなって浮かれていましたが、風強すぎて恐怖であまり集中できなかった……。

皆さま、お気をつけて。

 

さて、そんななかでも、どうにか読み終わったので、紹介します。

柚木麻子『ランチのアッコちゃん』

「読むとどんどん元気が出るスペシャルビタミン小説!!」と帯に書いていますが、まあその通り!

 

 

ランチのアッコちゃん (双葉文庫)

ランチのアッコちゃん (双葉文庫)

 

 

 

 

冒頭、恋人にフラれた直後の、いかにも自分に自信がない、地味な主人公・三智子からお弁当を恐喝するアッコさん。嘘です、恐喝はしてません。

落ち込んで食欲がなかった三智子のお弁当を食べたアッコさんは、ある提案を持ちかけます。

それは、三智子がお弁当をつくってくることと引き換えに、アッコさんの定番ランチを食べに行くこと!

最初は半信半疑の三智子でしたが、アッコさんのランチコースを巡るたびに、「明日はどんなランチだろう」とワクワクし始めます。

そして、少しずつ、自分の持ち味を発揮し始めるのです。

 

 

なんでもお見通しのアッコさん。

45歳独身。がっちりした肩幅。身長173センチ。黒髪のおかっぱ。一人黙々と仕事に励み、成果を上げる。

カッコよくも、近寄りがたいアッコさんですが、優しくてお節介な一面も垣間見れて、思わずファンになってしまいます。

 

 

私は最近、仕事で疲れ果てた日なんかは、重たい本は読めなくなってきました。

この本は、そんなときに最適です。

軽く読めて、フッと微笑み、いつのまにか元気になっている。

そんな素敵な本です。

本が嫌いでもいいじゃない。

こんにちは、okapです。

明日の仕事もなくなったし、突発的に時間にゆとりがあるので、思うことを書いてみます。

 

 

職業上、たくさんの保護者様と面談をします。内容は、もちろんお子様の学力について。

そのときに、よく聞く嘆きがあります。

 

 

うちの子、ゲームばっかりで全然本を読まなくて〜。

どうしたら読みますかね?

 

 

確かに、お子様の読解力がなかったら、心配になりますよね。せめて本読んでって思いますよね。

小学生に関しては特に、読書量と読解力は比例すると、私も思う。

 

ただ、だからといって、「強制的に本を読ませる」のは断固として反対です。

 

本を読むことを強制すると、それは「させられている」ことになります。

皆が大嫌いな宿題と一緒です。

読書=嫌なこと、という図式が成り立ってしまいます。

そんなの、もったいない!

 

 

少し自分の話をしますね。

私は、大学生のときジャズ研に所属して、トロンボーンを吹いていました。

 

年少の頃からピアノを習い、クラシックも聴いていましたが、そこまで熱中せず。

小学校高学年からB’zにハマり熱狂的に聴いていましたが、自分で演奏しようとは思わず。

 

ジャズは全く聴いたことがなかったものの、高校の先輩がいて存在を知っていたことと、雰囲気で入部。

自分なりに色々考えて、悩んで、練習して、たくさん遊んで、四年間楽しく過ごしました。そこに後悔は全くありません。

 

でも、ひとつだけ苦手だったのは、「ジャズ研民のくせに、そんなこと(ミュージシャン)も知らないの?」「アドリブできないヤツはクソだ」みたいな雰囲気。

 

「できなきゃダメだよ」「しなきゃダメだよ」

こう言われると、キツかったです。

アドリブの勉強をしなきゃいけない。もっとたくさん聴かなきゃいけない。

今は、音楽から離れた生活をしてるし、それでも聴きたくなった音楽は自分で選んで聴くし、半年以上楽器を吹いてないけど、別に吹きたくなったら吹けばいいかと思ってるし、本読んでる方が楽しいし、気にしませんが、当時はなかなか割り切れなかった。

 

そんななか、不思議と前向きに、やってみようかなと思うこともありました。

「できるようになったら超楽しいよ!」「これカッコいいから聴いてみてよ!」

自分がやってて楽しいから勧めたい!

自分が聴いて、ハマったから聴いてみてほしい!

こう言われると、自然と興味がでたんですよね。

結局、私は長続きはしませんでしたが、火をつけてくれる方もいました。

 

 

 

子どもに本を読んでほしい保護者の皆様も、同じなんじゃないかなと思うんです。

本を読むことを押し付けていませんか?

キツイ口調で、読書しないことを責めていませんか?

 

 

それよりは、きっと、

自分が楽しんで読書している姿を見せること。

お子様に興味が出てきたら、図書館や本屋さんに行って、自分で本を選んでもらうこと。そのときに、子どもが選んだ本に対して、口を出さないこと。

 

 こういうことが、大切だと思います。

 

 

そして、自分でも気をつけようと肝に命じます。

こんなブログを書いているのは、読まない人を責めているのではなく、少しでも興味を持ってもらいたいから。

こんなにも、楽しくて、苦しくて、切なくて、豊かな世界があることを知ってほしいから。

少しでも興味が出たときに、羅針盤にしてもらえるように。

 

是非読んでほしいとは言いません。

そのかわり、どんなによかったか、叫ばせてください。

 

 

 

 

【第16話】ほしおさなえ『活版印刷三日月堂 星たちの栞』大切な人にかける言葉を探している人へ。

こんにちは。

下宿先に戻ってきました、okapです。

一人暮らしのことを下宿するって関西の言い方だっけ?まあいいか。

台風の影響で明日が休みになって嬉しいです。

これ幸いとばかりに、実家から本を借りて帰ってきました。

 

紹介するのは、ほしおさなえ活版印刷日月堂

母がおもしろそうだと思って買っておいた本です。私が先に読ませてもらいました。

この方、著作を読むのは初めてになります。

 

 

 

 

 

川越という都市が舞台です。

調べてみると、埼玉にあるんですね。江戸時代の城下町らしく、今でも古い街並みが残っているようです。

そこにある、印刷所のお話です。

 

 

皆さんは、活版印刷ってご存知でしょうか。

私は、聞いたことあるかも、ぐらいでした。

古本屋で古い本を開くと、小さい文字が一つひとつ、くっきりと浮かんでいる、あれですかね。だと思うんですけど。

 

現代の印刷では味わえない、一文字一文字が立ち上がるような存在感。

日月堂を営んでいた祖父の死後、またそこに住むようになった孫の弓子。

最初は、印刷をする気はなかったのですが、依頼されて再開するようになります。

 

小説は、短編集の形式になっています。

 

印刷された文字を通して、様々な人が自分の思いを伝え合う。

直接は言えないことでも、形にすれば、伝えられる。

 

活版印刷で印刷されたショップカードや、名刺を見て、興味をひかれた人がどんどん扉をあけて、手探りで始めた弓子もまた、世界が広がっていきます。

 

 

過去がわたしたちを守ってくれる。そうして、新しい場所に押し出してくれる

 

 

本当にその通りだなあと思います。

しんどいときも、立ち止まったときも、結局は、幸せな過去の思い出がそっと背中を押してくれる。

 

もう一つ、大切な文章があります。

 

たまには、弱音をはくことも必要だな、って

弱さがあるからつながる、ってこともあるじゃないですか。

 

 

強そうに見える人でも、そのなかには何かを抱えている。

それを見せることができたら、少しは救われる。

 

活版印刷を通して、お客さんの心に寄り添ってきた弓子さんですが、お客さんによって救われることもある。

 

素敵なお話でした。

これも続きがあるようですね、また読みます。

 

 

【第15話】小手鞠るい『美しい心臓』美しいものを手にとって、ため息をつきたい人へ。

こんにちは。

ここ数日、あまりの眠たさに更新を断念してました、okapです。

でも、ずっと宿題をサボっているような、もぞもぞ感があったので、ブログ更新が身についてきたような気もします。

 

昨日今日とお休みなので、久しぶり(といってもお盆振り)に実家に帰ってきました。

一人暮らしの今の部屋よりは、今まで買いためた本がぎっしり詰まっているので、本棚を眺めているだけでも幸せです。

母親も本が好きなので、帰るたびに最近読んだおススメの本を教えてくれるのもよき。

 

今日は、大学生の頃に読んで、強烈に印象に残っている小説を紹介します。

小手鞠るい『美しい心臓』

 

 

美しい心臓 (新潮文庫)

美しい心臓 (新潮文庫)

 

 

 

 

願っていたのは、死だった。

死を願いながら、わたしはあの、短い日々を生きた。

 

 

 

冒頭の二行の美しさ。

本屋でたまたま手に取った本の書き出しがこれだったなら、間違いなく買います。実際買いました。

読んでみると、最初の二行だけではないんですよね。

短い小説ではなく、長い長い詩を読んでいるような。

 

 

主人公の女性は、DVをする夫と別居中でありながら、既婚者の男性と恋に落ちます。

世間から隠さないといけない関係であり、男性には当然家族があります。

それらに嫉妬を抱えつつ、一切を見ないように、男性との逢瀬に集中する主人公。

 

そんなある日、男性が仕事の都合で、コスタリカに三週間滞在することになります。

主人公は、男性の「妻」として、見知らぬ土地でのびのびと過ごします。

限られた、幸せな時間。

しかし、帰国してから、些細なきっかけで、少しずつ歯車が狂い始めます。

止まらない狂気と、我に返る出来事。

主人公は別れを決意します。

 

 

 

冒頭とラストの対比があまりにも完璧で、鳥肌が立つほどです。

美しく、完全でありながら、途方もない凄みを感じさせます。

 

言葉の美しさもさることながら、作中の出来事全てに意味があり、支え合っている。どのエピソードを抜いても、物語が完成しない。

全体の構成としても、とても美しく、無駄がありません。

 

 

美しいって何回言うねん!という感じですが、全く本当のことです。

豪奢な工芸品を手にして、思わずため息をつくような気持ちで本を閉じました。