本の処方箋「おくすり(本)だしておきますね」

放っておくと10時間ぐらい本を読み続ける女子が、悩みごと別に、本の処方箋を出すブログです。漫画も好きです。

2019年の方向はこっちだ!

あけましておめでとうございます。

本年も、どうぞよろしくお願いします。

つい最近改名しました風早小夜子です。

 

絶賛繁忙期に入っていたので、 めっきりブログ更新が減ってしまっていました。

晦日と三が日はお休みですよ。ふふふ。

 

ブログ更新自体は減りましたが、移動中など本はちょいちょい読んでいました。

職場のアルバイトの子に二人ほど、定期的に本の話ができる子がいて楽しいのだ。

たくさんの積ん読が残っているので、わくわく消化していきます。

 

さて、年が明けてしまいましたが、遅ればせながら昨年の振り返りをば。

 

社会人2年目に突入し、一気に責任が重くなって、正直めっちゃしんどかった。

何回自分に失望して転職を考えたか分からない。

でも、本気になれないくせに、敗走するのは嫌だという負けず嫌いなところもあり。

どうせ逃げるなら勝って逃げたい。

少なくとも、来年だけは続けようと思って働いてきました。

 

夏頃が一番しんどくて、そこからは気分が上がったり下がったり。

ただ、年末に関しては、気分が上がったまま終了したので、新年には希望を持っています。

 

なぜかって?来年どうしたいかの展望が見えてきたからです。

この一年は、取り敢えず体当たり、行き当たりばったりで駆け抜けてきた。

からしんどい部分もあったと思います。

年末、いろんなきっかけがあり、次の一年の計画を考えていました。

きちんと要望を伝えてくださるお客さんは、本当に有難いです。

未熟な自分を育てていただいていると感じます。

 

生徒一人ひとりと向き合うために、取り敢えず、せっせと型をつくってました。

型があるから考えやすい。

型があるから型破りができる。

ということで、つくった型をベースに、一人ひとりにカスタマイズできる一年にしていきます。

 

三月末に締め切りの新人賞に出すやつも、鋭意作成中です。

タイトルが決まらないままフラフラと書いていたので方向性がぶれまくっていたのですが、しっくりくるのに決まったので、もう迷いません。

今度は、紙で印刷して郵送なので、失敗はないはず……!

 

それでは、みなさま、本年もよろしくお願いします。

(処方箋ブログもぼちぼち更新頻度上げていきたい)

 

風早小夜子

応募できてなかった小説、供養します。ぜひ読んでみてください。

お久しぶりです。

しばらく更新していない間に名前まで変えました。

風早小夜子(かざはやさよこ)です。

ちゃんとペンネームつくろうと思って頑張って考えました。

大好きな小説の主人公から名前を取っています。二冊とも既に紹介しているのだ。

 

さて、今回のメインディッシュは、

「応募したと思ってたら再送依頼のメールが来てましたがガン無視したため文学賞に応募しそこねた話〜」です。

つらい。

もうそろそろ一次選考かな……?とドキドキしてメール検索したらこのザマです。

ショック。

 

原稿用紙40枚程度だったので、どこか違う賞に出そうと思いましたが、ちょうどいいのが見当たらず。

探すのが下手なだけかもしれませんが、ブログで発表して供養しようと思います。

 

本文にそのまま貼り付けてしまいますね。

読んでいただけると泣いて喜びます。

 

 

 

 

「スポットライト」

 

   枯れてる、と言われた。

   花についてではない、私のことだ。

   二十六歳になったが、浮いた話の一つもなく、彼氏を欲してもいない私に対して、友が言い放った言葉がこれだった。

「そんなこと言われてもさー」

   適当に返事をする。今日は、今年に入ってもう何度目かも分からない、愛すべき友人を慰める会だった。

   京華は、チラリと横を見る。

   隣に座る薫は、頬杖をつき、ぼんやりと目の前の空間を見つめていた。友としてのひいき目を抜きにしても、綺麗な顔立ちをしていると思うのだが、人見知りをする性格と、慣れてきた頃に頭角を表すズケズケとした物言いから、ターゲットの男の子を落とせたことはあまりない。今日も、好意を寄せていた男子にフラれたと、京華に召集がかかったのだった。

「だいたい、あんたはさー、もったいないと思わないわけ?」

   自分の恋愛でひとしきり嘆き、愚痴をこぼしきったあとは、決まって京華に矛先が向かう。これもいつものことなので、生返事で「んー?」と返す。

「髪はいつまで経っても黒のまんまだし、化粧だって眉毛しか描いてないでしょう?」

「そうだけど」

「彼氏は?つくんなくていいの!?」

「いい」

「会社にいい人いないの?」

「いない」

   京華は化学メーカーの研究職に就いていた。職場の人間の大半が男性だったが、彼らに度胸がないのか、はたまた京華に非があるのか、浮いた話は一切ない。京華としても、職場に恋愛関係を持ち込むのは面倒臭そうなので、真っ平御免だった。とはいえ、実際に面倒臭いかどうかは知らないのだが。

「じゃあこれだけ教えて。どんな男の子がタイプ?」

   それを言ったところでどうするんだ、と京華は投げやりに返事をする。

「あれがいいかな、ヒモ」

「は?」

「家に帰ったら、おかえりって言ってほしい」

「そんだけ?そんだけでいいの!?」

「うん」

「え〜それならせめて、掃除とかしてほしくない?」

   うーん、と、もごもご口を動かしながら考える。確かに、残業して帰ったときは、家を片付けてくれて、ご飯もつくって待ってくれてたら、有り難いなあと思うけど。でも、結局自分のことは自分でできるしな。

   ただ、一人で暮らす家が、寂しく感じることはあった。実家は気軽に帰れる距離じゃない。

「なら、僕なんてどうですか?」

   唐突に、割り込む声が上から降ってきた。視線を上げると、目が合った男の子がニッと笑う。カラリと乾いた声だった。手際よく私と薫の空いたグラスを回収する彼は、半年前に雇われたバイト君で、金髪ピアスの見た目に反して、丁寧な接客をする子だった。お客さんからの覚えもめでたく、常連のおば様たちのアイドルだ。

「あら、いいじゃなーい。一緒に住めば?」

   ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながら、薫がこちらを見ている。いや、いくら酔ってるからって、親友にほとんど初対面の男との同棲を勧めるなよ。

   薫の方を軽く睨んで黙らせる。そして、バイトの彼に向き直った。

「君、そんなこと言ってたらオバさんが本気にしちゃうよ?気をつけな」

「失礼しました」

   彼は、ニコっと音がしそうな営業スマイルを浮かべて、去っていった。その、ピンと伸びた背筋を見ながら、なんで唐突にあんなことを言ったのだろうと、京華は首をひねった。そこまで親しく会話をした記憶もない。

   その日、ベロベロに酔っ払ってしまった薫をタクシーに押し込む頃には、とうに日付は変わっていた。彼女はシェアハウスに住んでいるので、軒先に一人放り出しても、面倒見の良い住人が見つけてくれるだろう。運転手さんに住所を告げ、自分は乗らずにドアを閉める。薫は、トロンと眠そうな顔を向け、窓ガラス越しにバイバイと手を振った。

   家についたら連絡寄越しなさいよ。

   大声でそう諭す。

   聞こえたかどうかは分からないけれど、薫が心得たように頷いた。車が遠ざかるのを見送って、京華はくるりと背を向ける。

   ここから家まで、歩けない距離ではない。いつものように、帰ろうとしたところを、不意に後ろから呼び止められた。

「あの、」

   振り返ると、金髪のバイト君が立っていた。エプロンを外し、Tシャツに短パンという出で立ちである。しまったという顔をしているあたり、なんの計画もなく、うっかり声をかけてしまったのかもしれない。

   ふっと母性がわいて、こちらから声をかけた。

「どうしたの?」

   ほっとしたように返事があった。

「本日はありがとうございました。お一人でご帰宅ですか?」

「そう。もう一人はタクシーに突っ込んだ。君は?」

「僕も今日はあがりです」

「そう。今日はご馳走さまでした。美味しかったよ。また来るね、それじゃあ」

   京華は少し、よそ行きの顔で微笑んでから、背を向ける。

「あの、」

   今度は、振り返る前に、次の言葉が飛んできた。

「家、どのへんですか?送ります」

 

   

   なんでこんな状況になっているのだろうと、京華はまたしても首をひねった。

   常連の店のバイト君と、深夜1時半に、並んで歩いている。

   家がどうやら同じ方向らしく、送ってくれることになったのだ。

   バイト君は、名前をノボルと告げた。今は、大学3回生で、近くの国立大学に通っているそう。授業にはあまり行っていないらしいが、大学生なんて、そんな子が大半だろう。

「京華さんは、なんのお仕事をされてるんですか?」

「メーカーの研究職だよ」

「えええええ、研究者って、なんかカッコいいですね」

「ありがと」

   ころころ表情が変わるので、まるで子どものようだ。実際、私より、五歳は年下なんだけど。

「ノボル君は、将来とか考えてるの?」

   聞いてから、しまったと思った。踏み込み過ぎたかもしれない。

   しかし、彼はあっさり答えた。

「俳優目指してるんです。今は、オーディション受けたり、劇団で小さな役もらったりしてます」

   予想外の答えに面食らった。反応が少し遅れる。

「そうなんだ、でも、なんか納得」

「ホントですか!?」

   パッとキラキラした顔でこちらを見た。ブンブン振り回している尻尾が見えるようだ。眩しくて、咄嗟に目をそらす。

「普段の所作が綺麗だなあと思って」

   彼は、ありがとうございます、と照れたように笑った。

   私の家が近づいていた。

「このへんで大丈夫だよ。送ってくれて、ありがとうね」

   軽く手を振って別れようとすると、コートの裾を掴まれた。おや?と視線を上げる。

「あの、」

   言いにくそうに、顔を真っ赤にしている彼と目が合う。

「今晩、泊めてもらったりできませんか」

 

 

 

   京華は、シャワーを浴びながら、この日何度目か分からない「なんでこんなことに……」を繰り返した。キュッと栓をひねり、バスタオルで体をふく。シャワーを浴びる間、外で待てるなら構わないという交換条件を出した京華に、ノボル君はコクコクと頷いた。今も、ドアの前で待っているはずだ。パジャマ代わりのTシャツとジャージに着替える。

   京華の部屋は、1DKだった。ダイニングに、小さいけどソファも置いているから、そこで寝てもらえばいいだろう。と、そこまで考えて、京華は赤面した。急に心臓がバクバクしてくる。

   なんで断れなかったんだろう。初めましてに近い異性を部屋に招き入れるなんて、そんな真似をしようとしている自分が信じられなかった。そんなに酔ったつもりもないんだけどな。でも、もう今から「やっぱりダメ」とは言いづらい。

   京華は、いざとなったら殴りとばす覚悟を決めて、玄関のドアを開けた。

「おじゃまします」

   申し訳なさそうな顔をして、ノボル君が、ぺこりと頭を下げて入ってくる。

「本当に、無理を言ってしまって、すみません」

「いいよ。入れないんでしょ、家」

   どこかで鍵を落としてしまったらしいと聞いていた。

「多少散らかってるけど、ごめんね。ソファに毛布置いとくし、必要なら使って。このクッション枕替わりにしていいし。シャワーも自由に使って大丈夫。じゃあ、おやすみ」

   一息に言って、逃げるように自室のドアに手をかける。

「あの、」

   ノボル君の声に、キュッと、心臓が縮むのが分かった。振り返ることができないまま、そのまま立ちすくむ。

「ありがとうございます」

   背を向けたまま手を振って、京華は扉を閉めた。そのまま、扉に背を預けて、ずるずるとしゃがみこむ。

   シャワーを浴びて、スッキリしたとはいえ、お酒がまだ体に残っている。寝てしまおう。寝て起きたら夢かもしれない。

   布団を被って、きつく目を閉じた。

 

 

 

   何か音がして、京華は眠りから浮上した。

   うー、と伸びをして手を伸ばす。再び、聞き覚えのある音がした。どうやらスマホの通知である。

   やっとの思いで探り当てると、眠い目をこすって画面を開く。薫だった。

「やっほー、昨日はありがと!マジ感謝!次は、この前合コンで会った白川くん狙ってくわ!!」

   まるで恋するマグロである。止まらなかったら死んでしまうのだろう。その切り替えの早さが、彼女の良さでもある。

「京華も恋愛しなよ〜やっぱり昨日のバイト君はどう?京華がトイレ行ってる間にいろいろ聞いたけど、満更でもなさそうよん」

   そこまで読んで、一気に目が覚める。

   そうだった。え、今何時?

   時刻は九時を少し過ぎたあたり。土曜日の朝は、いつもより空気がのんびりしている気がする。しかし、本日の京華にとっては、それどころではない。一応、手鏡で髪と顔を確認したあと、そっとドアを開けた。

   目に入ったのは、ソファで眠るノボル君だった。暑かったのか、毛布がずり落ちている。服の隙間から、筋肉質なお腹が覗いている。思ったより、しっかりした体つきをしている……などと考えてしまい、慌てて目をそらした。

   しかし、どうしようか。

   よく寝てるから、起こすのも悪い気がする。

   悩んでいると、わずかに声を漏らし、ノボル君が顔を顰めながら目を開けた。

「おはようございます」

   寝起きの掠れた声が、少しセクシーだった。京華は、慌てて笑顔をつくる。

「おはよ、よく眠れた?」

「もうバッチリです。本当にありがとうございます」

   そう言いながら、彼は大きな欠伸をした。かざした手の隙間から見える、歯並びまでもが整っている。

「ごめんね、私も起きたばかりで、朝ごはんの準備がなくて……。パンぐらいなら焼けるけど、どうする?」

   ノボル君は、まだ眠そうに目をこすっている。

「お気遣いありがとうございます。でも、鍵も探さないといけないし、お暇します」

   無理に引き留めては、逆に気を遣わせるだろう。

「そっか、頑張ってね」

「はい、ありがとうございます」

   彼は、すっと立ち上がり伸びをした。またしても、チラリと腹筋が見える。京華は、素知らぬふりをして、彼に洗面とお手洗いを勧めた。

   ノボル君の準備は、五分もかからなかった。玄関までお見送りをする。

「じゃあ、気をつけて」

   屈んでスニーカーを履く彼に声をかけた。ノボル君は、私を見上げると、ニッと笑い、そのまま、勢いよく立ち上がる。ぶつかる、と思わず体をそらせようとすると、骨ばった手が背中に回っていた。至近距離で視線が絡み、混乱する。そのまま、ノボル君がそっと囁いた。

「ありがとうございました」

   そうして、いたずらっ子のような笑みを浮かべて、ドアの向こうに消えていった。

 

 

 

「え、それだけ?」

「うん」

「はあーーーーー!?おまえ、年頃の男女が一つ屋根の下で一泊して、そんだけ!?枯れてんなーーー。彼もウチ来たらよかったのに!!」

   その日の夜、事の顛末を薫に送ると、すぐに電話が来たのだった。別れ際、うっかりドキッとしてしまったことは、もちろん話していない。ただ、一晩、別の部屋のソファに寝かせてあげただけの話。

「本当にねえ」

   確かにシェアハウスの方が、気兼ねなく泊まれそうだ。ソファに寝転びながら、そう相槌をうつと、向こうで暫し沈黙があった。

「あんたさあ……」

   薫にしては珍しく、歯切れが悪い。「ん?」と続きを促しても黙っている。

「ま、ええわ。この年になってまで拗らせてるあんたの面倒見てられるか!私は私で忙しいもんね!!」

   威勢良く電話が切れた。

   ツー、ツーという音を聞きながら、ため息をつく。京華は、そのまま仰向けに寝転がった。

   薫は、恋人をつくれつくれって言うけどさ。好きになったって、報われるかなんて分かんないじゃん。むしろ、報われない可能性の方が高そうじゃん。それなら、仕事の方がよっぽど、見返りがある。別に、結婚だって、しなくていいのだ。だって、一人でも生きていける。一人でラーメン屋に入ることも、映画館に行くことも、なんの抵抗もない。

「さて、明日も休みだし、映画でも観るかな」

   そう声に出して、よっこらしょと起き上がる。その拍子に、カサリと紙のこすれる音がした。

「ん?」

   よく見ると、ソファとクッションの間に何か挟まっている。取り出して見ると、それは、折りたたまれたノートの切れ端だった。

「ヘタレですみません。キョウカさんが気づくか気づかないか、賭けてみようと思いました。僕が賭けに勝ったなら、連絡ください。昇」

   少し丸っこい文字が並んでいる。その横に、メッセージアプリのIDが書いてあった。

   紙に書いてあることが目の上を滑り、何度か読み直す。心臓の音がうるさい。と同時に、自分が宙に浮いて、その様子を傍観しているような気もした。

   さて、どうしようか。薫に相談しようか。

   そう思ったが、結局は止めにする。どうせ返ってくる返事は一択だ。

 

 

***

 

 

   突如、ブーっと音を立てて、スマホが震えた。慌てて手に取り、画面を確認する。

「昨日はお疲れ様。大変だったね。鍵は見つかった?」

   その返事を見た昇は、思わず手を高く突き上げた。

   よっしゃああああああ、第一関門、クリア!!!!

   彼女は、今、画面の向こうでどのような表情をしているのだろう。返事だけして、さっさとスマホを置き去りにしただろうか、それとも、僕の返事を待っているだろうか。

   昇には、全く想像がつかなかった。それは、ある意味で甘美なご褒美だった。つい、自分に都合のいいように、妄想してしまう。

   さて、どう返事を返そうか。

 

 

***

 

 

「お気遣い、ありがとうございます。鍵は、近所の交番に届けられていて、無事に家に入ることができました。昨晩は、急に押し掛けて申し訳ありませんでした。」

   録画していた映画を観ながら、チラチラとスマホを気にしていた京華は、通知音のした瞬間にバッと手に取り、一呼吸置いてから、画面を見た。文面を見て、ふっと息をつく。  

   無難な文章が並んでいた。当然だ。先に無難に返事したのは自分の方だ。放っておけば、これで会話は終わるだろう。そうあるべきのような気もしたし、そうなっては残念な気もした。

   困った。どう返せばいいんだろう。

   こんな気持ちは久しぶりだった。自分の返事ひとつで、将来がガラリと変わってしまうような恐ろしさ。自分は、一歩踏み出すのだろうか。それとも、日常の延長を、このまま続けていくんだろうか。

   思考の海に潜っていた京華は、再び手の中のスマホが震えたことに動揺し、思わず取り落としてしまった。慌てて拾い上げ、恐る恐る画面を確認する。

「宿のお礼に、今度、デートに行ってはもらえませんか。美術館のチケットを2枚頂いたのです。」

   心臓がへんな跳ね方をした。

   デートという単語を自分ごととして聞くのは、果たしていつぶりだろうか。

   落ち着け、京華。相手は五つも年下の大学生よ。しかも、イケメンの。デートっていうのも、茶化してるだけに決まってる。

   でも、なぜだろう。相手の本心がどうあれ、この駆け引きのようなやり取りを、もっと続けていたかった。

「あら、ありがとう。美術館は好きだよ。来週の土曜日はどう?」

   承諾するだろうと、とっくに自分でも知っていた通り、しかし、精一杯余裕ぶって、京華は返信した。

 

 

***

 

 

   さて。キョウカさんとはどう接したらいいのだろう。真面目そうだし、彼氏がいたことないって聞こえたから、こちらも硬派にいった方がいいのかな。

   などと、考えてはいたものの、いざ、本人を目の前にすると、全て吹っ飛んだ。

   キョウカさんは、待ち合わせ場所の時計台に、もう到着していた。時計の足の部分に軽くもたれ、手には文庫本を広げている。その姿が、その一瞬が、とても大切で、気高いものに思われて、声をかけられなくなる。

   視線に気づいたのか、ふっとキョウカさんが顔をあげた。

   目が合った瞬間に、明らかに動揺し、慌てて本を鞄にしまうその仕草が、とても可愛らしかった。相手も緊張しているんだと、少し気が楽になった。

 

 

***

 

 

「ねえ、なんで、声をかけてくれたの?私に」

   ベッドの上で、毛布にくるまりながら、彼女が問う。今日は、何度目かの逢瀬のあとで、ついに、「そういうこと」に持ち込めたのだった。今まで、彼氏が出来たことなかった、京華さんの、初めて。おずおずと背中を撫でる手が、くすぐったかった。

「理由、いります?」

   ペットボトルの水をテーブルに置き、彼女のもとに向かう。おでこにキスを落とした。その瞬間、ギュと目を瞑るのが可愛い。五つも年上だと思えなかった。可愛くて、愛おしくて、この手の中に閉じ込めて、守りたいと思う。

「だって……」

   俯く、その頭頂部の丸みですら、愛おしい。ベッドの隣りに潜り込み、くるりと背を向けてしまった彼女を、毛布ごと後ろから抱え込んだ。やわらかな髪の毛に、口付ける。

「姿勢がいいなあって、思ったんです」

   呑み屋には、いろんな人が来る。でも、ほとんどの人に共通するのが、お酒を飲みに来ているということだ。そして、たいていそんな人たちは、テーブルに肘をついたり、背もたれに寄りかかったり、隣の異性の肩にもたれたり、何かしら、かしいでいる。そんななかで、京華さんは、常に姿勢が良かった。

   座席を見渡したときに、目に付いた。そのうち、同じ人だと気づいた。いつのまにか、目で追うようになっていた。

   京華さんは、たいてい、ベロンベロンに酔っ払う女性の介抱をしていた。自分自身は、たいしてお酒も飲まないくせに、迷惑そうな素振りを一つもせず、友人の失恋話を聞いていた。

「それなら、私もだよ」

   ぼそっと小さな声が聞こえた。

「私も、昇君のこと、姿勢がいいなあって思ってた」

「見てくれてたんですか?」

   僕が声をかける前から。

   という言外のニュアンスは伝わっていたようで、「知らない」と彼女は照れてしまった。

 

 

***

 

 

   それから、たくさんの日を一緒に過ごした。

   休日は、必ずといっていいほど、京華さんの家に泊まりに行って、映画を見たり、それぞれ無言で本を読んだりした。京華さんの誕生日には、ユニバに行って、お祝いした。僕の誕生日は平日だったから、京華さんは仕事で、しかも残業になってしまって。だから僕は、京華さんの家でご飯をつくって待っていた。京華さんは、「どっちのお祝いだか分からないね」と申し訳なさそうにしてたけど、そんなことはどうでもよかった。

   そんな風に、ずっと愛しい日常が続けばよかったのに。

   就職活動もしないまま、僕が大学を卒業しようとしていたとき、急に別れを告げられた。

   その日、天気予報では、晴れるはずだった。だから、僕は、傘を持たずに、待ち合わせ場所に向かった。

   京華さんが指定したのは、彼女の最寄駅のそばの小さなカフェだった。余裕のある時間についたが、京華さんは既に席についていた。僕の姿を認めて、手をあげる。僕も手をあげて、注文を済ませて席についた。

「今日はどうしたんです?珍しいですね」

   京華さんは律儀なので、たいてい、会う約束は、前日までに済ませてしまう。当日の朝に、昼の予定を決めるのは、記憶にある限り初めてだ。薫さんと喧嘩でもしたのかなと、このとき僕は考えていた。

「昇君あのね、」

   そう言って、京華さんは暫くうつむいていた。目の下にクマがあったし、顔色が悪かった。これはどうやら、かなり深刻だと思って、彼女の手を取ろうとしたとき、京華さんは一息に言い切った。

「別れましょう」

   彼女のその言葉を、僕はどこか遠くで聞いていた。自分の両手が、彼女の手を掴み損なって、不自然な形で固まっている。自分が、水族館の水槽のなかにいるような気がした。ねえ、水に呑まれて、音がよく聞こえない。

「……なんで」

   かろうじて絞り出した声は掠れていた。こんな声でも、水槽の外には届いたらしい。

「他に好きな人ができたの。私の三つ年上の人よ。結婚を前提に交際を申し込まれたの」

「そんなの、知らない」   

「だって、言ってないもの」

   京華さんは、ふふっと口元を歪めて自嘲するように笑った。僕は、ぼんやりと、その顔を見つめた。寂しそうな微笑みだと思った。

   呆然としていると、京華さんが席を立つ気配があった。

「今まで、ありがとう。昇君。どうか、幸せになって」

   ハッと我に返り、スプリングコートの裾を掴もうと手を伸ばす。しかし、その手をすり抜け、京華さんは歩いて行ってしまう。

「待って!」

   慌てて追いかけようとして、足がもつれて思い切りこけた。周囲の好奇の視線が痛い。店員が気を遣って声をかけてくるのに何とかお礼を言い、這々の体で立ち上がる。

   そのあいだに、彼女はもう店の外に出てしまっていた。

「待ってよ!!」

   やっとの思いで、追いつく。肩をつかんで、無理やり振り返らせると、彼女は涙を零していた。その顔を見たら、もう我慢できなかった。

「なんで、別れようなんて言うんですか」

   どう見ても、本心からの言葉に思えなかった。彼女の顔は、悲しいけど悲しいと言えない子どものように、くしゃくしゃだった。

「言ったじゃない。好きな人が」

   最後まで言う前に、京華さんの唇に噛み付く。涙に濡れて、しょっぱい味がした。抵抗する彼女の両手首を片手で難なく捕まえて、もう片方の手で、頭を抱え込む。彼女は体をよじろうとするが、僕の腕はそんなことではびくともしない。

   気づけば、雨が降り出していた。あっという間に土砂降りになる。人々は、雨に濡れまいと顔を隠し、僕たちは、世界に二人きりになった。

   手を彼女の両手首から離し、濡れぼそったシャツの上から、胸のボタンに触れる。びくりと体が震え、自由になったはずの両手で僕を遠ざけようとするが、まったく非力だった。

   大丈夫。だって、彼女のことなら、なんだって知っている。

   ボタンを一つだけ外し、根気強く、敏感な先端をまさぐる。やがて、完全に彼女の力が抜け、大人しくなった。そのまま僕に体を預ける形になる。そこでようやく、僕は唇を離した。

「ね?京華さん。考え直して?僕以外に、京華さんを幸せにできる人なんかいません。相手が誰だか知らないけど、僕の方が、京華さんを愛してます」

   必死だった。こんな言葉をつらつらと並べながら、僕は頭をフル回転させていた。

   京華さんの好きな人って誰だ?三つ年上ということは、今ちょうど30歳のはずだ。職場の人だろうか。それとも……。

「ね、昇君」

   京華さんが、僕の頬に手を当てた。泣いている子どもの心配をしているような、優しい手だった。

「ごめんね、好きな人ができたっていうのは嘘。自分勝手でごめんなさい」

   このあとに、何を言われるのか、もちろん知っていた訳ではなかった。

   でも。

   このときの、京華さんの言葉を、表情を、僕は死ぬまで思い出すだろう。何度も、鮮明に。

   そう思った。

「でもね、私は自分の力で幸せになれる」

   そう言う京華さんは、瞳だけが、ほんの少し、愛しさと寂しさを滲ませていて。そして、晴れやかな顔をしていた。

   これは、お願いでも、相談でもなく、報告だ。京華さんは、すでに心を決めている。

   僕は、どうやっても引き留められないことを悟った。

「ありがとう、今まで仲良くしてくれて。これからの昇君を応援してる」

   京華さんが去っていく。僕の人生から。

   初めて、自分から好きになった。初めて、勇気を振り絞って、自分から声をかけた。それなのに、京華さんは、本心をぶつけてくれないまま、僕の手からすり抜けてしまう。

   いったい、なんと言えばよかったのだろうか。

   かけるべき言葉が見つからなかった。   

   ゆっくり、京華さんが背を向ける。そのまま、土砂降りの雨のなかに、消えていった。

   ただの一度も振り返らなかった。

   

 

***

 

 

「しっかし分かんないわー、私には」

   飲み干したジョッキを勢いよく机に叩きつけ、薫が嘆く。

「寂しくないの?」

「そういう問題じゃないの」

   京華は、涼しい顔で答えた。

   初めて付き合った恋人と別れて5年。それから、誰とも交際はしていなかった。一方の薫は、合コンで出会った男性と電撃結婚をして、もう三年になる。今では一児の母だ。薫の方が断然忙しいはずなのだが、たまにこうして付き合ってくれる。

「昇君とより戻さないの?だって、今ではもう立派な駆け出しの俳優くんよ?そのまま捕まえとけばよかったのに」

   初めて昇君をテレビで見かけたのは、いつだったか。最近は、映画のコマーシャルでも、しばしば目にするようになった。

「ていうか、もう時効でしょ?なんで別れたりなんかしたのよ、教えなさいよ」

「秘密」

「もう、変なところで頑固なんだから」

   薫はぷっと頬を膨らました。

 

   今日も今日とて、酔いつぶれてしまった薫を、家まで送り届ける。旦那さんに引き渡すと、いつもの通り、丁重に感謝された。彼の両親と一緒に住むのは、何かと気苦労も多いのだろう。それを分かって、こうして飲みに送り出す薫の旦那は、本当にいい男だ。

   そのあと、いつもならそのままタクシーに乗って帰るところ、ふと歩こうと思い立って駅まで歩くことにする。もう三月だというのに、風が少し冷たかった。

   実は、薫にも、誰にも言ってないことがある。

   昇君と別れたあの頃、京華は妊娠していたのだった。

 

 

***

 

 

   あれ、いつから生理が来てないんだっけ。

   トイレでふと気になった。しかし、京華は、日記などつけていなかったので、前回の生理がいつだったのか、記憶しか頼るべきものがない。その記憶も、かなり曖昧だ。しかも、最近、生理周期も平気で狂うようになってきて、ますます訳が分からない。

   でもなあ、もう二十も後半だしなあ。こういうのも気を使った方がいいのかしら。

   そういう軽い気持ちで、仕事帰りに受診した婦人科だった。そこで妊娠を告げられた。

「おめでとうございます。現在三週目です」

   一瞬、何を言われたのか分からなかった。

   医者の言葉が、遠くから聞こえる。

   まだまだ子どもに思える自分の身に、正真正銘の子どもが宿っているというのが、なんとも頼りない。

   自分が母になった実感なんて、欠片も湧かなかった。

   だから、帰りの道すがら、ぐるぐると考えていたのは、妊娠が嬉しいとか、楽しみとか、そういう感情ではなく、昇君に何て言おう、ということだった。

   まだ二十一歳の彼に、二十六の女が妊娠しましたと告げるのは、あまりにも重い。

   彼は、単純なところもある。泣いて喜んで、結婚しましょうなどと言いかねなかった。それで、本当によいのだろうか。

   延々と悩みながら、最寄駅から帰宅している最中だった。

   駐輪場によく付いているようなトタンの細長い屋根があり、そこの棒にぶら下がって、若い男性が懸垂をしていた。

   真っ暗ななか、そこだけ、街灯で照らされている。

   まるで、その男性のところだけ、スポットライトが当たっているような。

   暗闇のなか、ぽっかりと浮かび上がる、懸垂をする男性。

   非現実的な光景だった。

   今抱えている悩みも忘れて、つかの間、京華は見惚れていた。それほどまでに、うつくしい光景だった。

   しばらくして、男性が懸垂をやめて、一息つくのが見えた。

   横顔が見えて、京華は息を呑む。

   昇君だった。

   その瞬間、京華は、彼には何も言うまいと心に決めた。

   今振り返ってみても、理由はうまく説明できそうにない。彼の若さを思い知ったのだろうか。彼が夢を追いかけていることを思い出したのだろうか。

   分からない。ただ、このとき京華は一人で強烈に決意したのだった。

   一人で産み、一人で育てる。

   そのためには、別れなければならない。

 

 

***

 

 

   下手な嘘をついて、別れ話を持ち出した。

   雨のなか、彼に言った。

   私は自分の力で幸せになれる。

   この言葉に嘘はなかった。だって、私は一人で充分生きていける力がある。安定収入はあるし、身の回りの世話もできるし、自分で自分の機嫌だって取れる。

   でも、結果として、それが正しかったのかは分からない。結局、赤ちゃんは、妊娠十週を迎える前に流れてしまった。ひとしきり泣いて、こっそり弔ったあと、京華は、何事もなかったかのように日常に復帰した。いや、多少取り乱した時期もあるが、薫には、昇君と別れたからだと思われていただろう。仕事でも、責任ある立場を任されるようになった。少しずつ、少しずつ、回復してきた。

   テレビで初めて昇君を見たときには、息は詰まったけれど、惜しいことをしたとは思わなかった。

   この身には何も残っていない。かつて愛した人のモノも、忘れ形見も、何もない。あるのはただ、思い出のみ。

   それでも、私は生きていける。

 

 

   背筋を伸ばして、京華は歩いた。

   街灯がポツポツと、道を照らしてくれていた。

自分以外の誰かになりたい人へ。山内マリコ「ここは退屈迎えに来て」

こんにちは。okapです。

今日は久しぶりのお休みで、彼氏とデート、元バイト先の先輩と呑み、実家に帰るの3コンボを果たしました。

実は連休なのだ。ふふふ。

 

連休に備えて、新しく本も購入してホクホク。

ハードカバーでも、文庫化するのを待てずに購入するケースが増えており、本棚の容量が心配。

かといって、漫画とビジネス本はKindleでガンガン買うけど小説は電子書籍で買う気がまだ起きないんよな。省スペースで非常に良いと思うのだけど。

大好きな小説家の方々と本屋を応援する意味でも、本屋さんで本を買おうと思います。本屋がなくなったら嫌だなあ。

 

 

さて、今日紹介するのは、連休に備えて買ったハードカバー……ではなく、山内マリコここは退屈迎えに来て

 

 

ここは退屈迎えに来て (幻冬舎文庫)

ここは退屈迎えに来て (幻冬舎文庫)

 

 。

 

まず本のタイトルがとても良い。

語感の良さもさることながら、この言葉だけで、人生に飽きている女の人がふっと浮かぶのが凄い。

 

もちろん内容もとても良かったです。

「人生に飽きている女の人」と一口に言っても、その姿形、性格、年齢は様々で。

きっと、3年後、5年後、10年後の自分がもう一度これを読んだとき、全く違う部分に、でも同じように共感するんだろうなと思った。

 

 

実家があるのは、別に田舎ではないし、そこそこ都会の方だろうし、住宅街というだけで、小説の舞台になるような地方都市とはかけ離れている。

でも、ずっと思ってきた。

自分じゃない誰かになりたい。

 

 

 

教科書、持ち物、テスト、手続きの書類、その他諸々。

人生で一番書く機会が多い名前って、やっぱり自分の名前ではないかと思う訳です。

自分の名前を書くたびに、いつも考える。

自分は、この人間をどう思っているんだろう。

 

無邪気に誇らしく思っていた時期もある。

とてつもなく自己嫌悪に陥っていた時もある。

ま、しゃーねーか、それでも自分は自分だもんなと思える時もある。

 

 

自分って何か分からなかった。

今は、少しずつ自分を客観視できるようになってきた気がする。それでも、分からないと思う部分の方が多い。

自分じゃない誰かが眩しかった。

なんで自分は、自分以外の何者にもなれないんだろう。

 

 

ここは退屈迎えに来て

明らかに、自分ではない誰かに向かって放たれた言葉である。

この退屈な人生を救ってくれる誰かを、いつも求めている。

 

解説でも触れられていたが、作中で唯一退屈していない人が出てくる。

彼は、小学校時代から皆の人気者で、輝いていて、中高時代もモテていて、サッカー選手になったかと思えば実業団が潰れてしまって、様々な職を転々としてから、自動車教習所の教員になっている。

キラキラ輝く青春から、冴えない大人へ変貌してしまった彼は、それでも自分の人生を悲観していないだろうし、退屈もしていないだろう。

真っ当に、地に足のついた生活をしている。

 

そんな彼も、この短編集の中で一編、彼がゲーセンの店長になってやさぐれている話が出てくる。

そこでの彼は、疲れてるし、人生を諦めている。

しかし、ある出会いから新しい人生へ歩み始める。

 

退屈してなさそうに見える、自分を受け入れているように見える人でも、人生に迷うことはある。

それ以外の人にとって、なんの変哲もない、ただの自分で生きていかなくてはならないこの人生に、どうか少しでも救いがありますように。

 

児童書を貪るように読んだ、元子どもたちへ。村山早紀「その本の物語」

ご無沙汰しております。okapです。

仕事が忙しい時期に入ってきて、ひょえーという感じです。

 

平日はなかなか時間が取れなくなってきたのですが、休日は少し余裕があるので、この隙に少しだけ。

とはいえ、部屋はなかなか綺麗に保たれているし、お花を買ってきて花瓶にいれて、お香も新しいのを買って焚いているので、「なんとまあ優雅な暮らし」気分を味わっております。

 

本日紹介するのは、何日か前に読了ツイートをした、村山早紀「その本の物語」

 

 

いつ買ったか覚えていないぐらい前に買って、積んでいたものです。

今だな、という瞬間が来たので読み始めました。

 

物語の下敷きになっているのは、「風の丘のルルー」

喋るぬいぐるみと旅する、寂しがり屋の魔女の子ルルー。

 

風の丘のルルーという言葉を見たとき、実家の近くの図書館を思い出しました。

夕方、陽が優しく差し込む時間帯。

ハードカバーの児童書。

「ひとり旅かい?」と聞かれて、「いいえ、この子とふたり旅」と答えるルルー。

 

読んだことすら忘れていた、でも、遠い昔に出会っていた物語でした。

全体のエピソードは覚えていなくても、欠片はたくさん覚えていました。

 

長い長い時間を経て、再会を果たせてよかった。

大きくなった今だからこそ、もう一度読めてよかった。

 

ルルーを取り巻く現実世界のお話も、とても素敵でした。

こんな優しい奇跡が、きっとどこかに溢れている。そう思えるお話でした。

不器用でカッコ悪い自分らも、わるくないなと思いたいときに。津村記久子「これからお祈りにいきます」

こんにちは。

先週は何やら朝から出勤の日が多く、あまり本は読めていません、okapです。

 

唯一読んだのが、津村記久子「これからお祈りにいきます」

なんだろう、とても不思議で、でも地に足のついた物語でした。

 

 

 

 

二篇の物語が収められています。

サイガサマのウィッカーマン

バイアブランカの地層と少女

 

ウィッカーマンとは、ケルトドルイド教が由来だと思われます。

枝で巨人をつくり、その中に生贄を入れて焼くやつです。

ただ、サイガサマの場合は、動物や人間を入れるのではなく、「取られたくない」部分を工作して入れる風習です。

 

このサイガサマの色んな噂話がなんというか、リアルで憎めないんですよね。

・間違えて違うところ持っていった

・人体に二つあるもの(眼球や腎臓)を持ってくのは、複数あるぶんは取っても大丈夫だろうという判断

・最近は精度が上がっている

・「ダメな子だから」と言われる

 

畏れの対象である神様……というよりは、近所の放っておけない子、みたいな扱いをされています。

なんだかかわいい。

終わり方がとても愛おしいなと思います。

愛が溢れている。

 

 

 

バイアブランカの地層と少女は、リアル京都の大学生という感じ。

なんでか分からんけど、今これをしなあかん気がする!

という部分の描写が素敵。

 

 

どちらの話も、自分のことではなく、他の誰かのために、一生懸命祈る。

不器用で、側から見るとちょっとカッコ悪くて、そこがとても愛おしい主人公たちです。

 

人間もわるくないな、と思える本でした。

 

「好きなことを仕事にする」に抱いていた幻想:仕事ってしんどい

こんにちは。

自分は何がしたいんだろうと考える人になっています、okapです。

 

なぜこんなことを考えているのかというと、

・昨日、全社員が集まる会があり、優秀部署の発表を聞いた

・今日、上司とのキャリアに関する面談があった

この二つが原因です。

 

なんでしょう。

落ち込んでるのかな。

 

かたや、同じような年齢で、全方位で素晴らしい業績を残して表彰されるような人もいれば。

かたや、自分は清掃の点数が低すぎて罰ゲームの苦いジュースを飲まされる。

(掃除できないキャラが定着しすぎて爆笑されましたが)

 

このままでいいのかなあ、と思う自分と、

かといって、そこまでバリバリ働こうと思わない自分。

負けず嫌いではあるけれど、てっぺんを目指そうという気にはならない。

 

自分は何がしたくて、この会社に入ったんだっけ。

 

 

 

前の記事ではなんて書いていたか。

okap0605.hateblo.jp

 

楽しい部分、嫌な部分と書いています。

まとめると、

楽しい部分は、人と喋ること。

嫌な部分は、細かい〆切業務と、営業ノルマ達成へのプレッシャー。

 

 

営業ノルマなんて言われずに、楽しく喋るだけの仕事だったらいいのに、なんて。

 

 

でも、楽しい仕事ってあるんだろうか。

しんどくない仕事ってあるんだろうか。

そもそも「しんどい」と「嫌」って、同じようなイメージがあるけど、違うのかな。

 

 

 

調べてみました。

 

 

 

「しんどい」ひどく疲れを感じるさま。つらい。面倒が多いさま。骨が折れるさま。

「嫌」欲しないさま。したくないさま。きらいだ。不愉快なさま。

 

 

 

なるほど。

つまり、「好き」と「しんどい」は両立し得る訳ですね。

これは、納得できるような気がします。

 

現在、私は小説で飯を食えるようになりたいと思って、小説を書いて文学賞に応募したりしています。

小説が好きです。

小説を読むのが大好きです。

小説を書くのは……どうなんでしょう。

小説を読んだり、映画を見たり、美味しいケーキを食べたり、昼寝をする方がもっとずっと好きです。

 

頭の中にある話を、進めたくないと思うときも、向き合いたくないと思うときもあります。

しんどいし逃げたいと思う気持ちもあります。

 

小説が大好きでも、書くという作業にはしんどさが伴うように。

仮に、小説を仕事にできたとしても、しんどいことには変わりないんでしょう。

 

 

 

大好きなことを仕事にしたってしんどいんだから、好きなことを仕事にしたらしんどいのは当たり前。好きじゃないことを仕事にしたなら、もっともっと当たり前。

 

 

ここを勘違いしていたような気がします。

 

キリスト教的価値観に基づくと、そもそも労働って、産みの苦しみと一緒に与えられた罰則ですしね。

 

 

あーーーしんど。

 

 

ここまで1200文字ほど書きましたが、至った結論が「仕事とはしんどいものである」って。

 

そんだけかい!

とベテラン社会人の皆様につっこまれてしまいそうです。

 

 

今日、上司に言われましたが、本当は私、かなり理屈っぽいのかもしれないです。

(全くもってそんなことないと思っていた)

でも確かに、自分が納得できることは受け入れるし、前向きにやろうと思うけど、理解できないことは受け入れ拒否する傾向はあるような。

 

 

 

きっと今はまだ、

 

・仕事ってなんだろう

・働くってなんだろう

・生活するってなんだろう

 

これを自分なりに落とし込めていないんでしょう。

だから行動に迷いが出る。

 

 

 

迷ってるうちは、業績なんてあげられないでしょう。

割り切ってスイスイ進むことができたらよいのですが、納得しないと進めない自分もいる。

 

 

歩みが遅くて、会社や上司には申し訳ない限りですが、一つひとつ、考えていこうと思います。

 

 

 

「少しでも楽しいと思えてるんやったら、今のうちに、しんどい思いしとき」

今日、上司に言われた言葉です。

ここまで文章を書いて、考えて、ようやっと意味が分かったような気がします。

 

 

来週からは、保護者にバンバン電話する。生徒にガンガン話しかける。

授業が始まってからは、パソコンの前に座るのは、電話をかけるときだけ!

 

がんばろう。

次の応募先を決めました。第32回小説すばる新人賞

こんにちは。

昨日今日とお休みだったので、うっかり昨晩徹夜しました、okapです。

明日から仕事なのでもう寝なきゃ……。

 

 

今日は、恵文社一乗寺店に行ってきました!

なんという素敵な空間。

「日本の小さな本屋さん」という本を買いました。

写真を眺めているだけでも素敵……。

自分だけの拘りで本屋さんをつくるのも、楽しそうですね。

 

 

本屋さんに行って、喫茶店に入って買った本を眺めて、帰ってお昼寝して、という幸せな一日でした。

あとは、本題ですが、次の小説を書き始めました。

 

小学生のときに描いてた漫画が原案です。完結させたかどうか覚えてません。家のどこかに保管されているのかどうかも分かりません。頑張って描いた記憶はあるんだけどなあ。

架空の国が舞台です。

構成とかは大雑把にしか決まってませんが、最後の書きたいシーンはあるので、そこまで辿り着ければ勝ちや!

あとでいくらでも修正できるし削れると割り切って、まずはガシガシ書こうと思います。

 

 

長くなりそう&内容が重たくなりそうなので、〆切はかなり先ですが、3/31の小説すばる新人賞に応募するつもりです。

先とはいえ、本業が忙しさマックスの時期を挟むので、〆切感としては丁度いい感じでしょうか。

ワードで書いてる訳じゃないし、印刷もする必要があるので、応募するまでめんどくさそう。

 

思ったより早く書き終わったら、そのとき考えます。