風早小夜子のブログ

本の紹介とか。漫画の紹介とか。考えてることとか。いろいろ。

【第10話】ミミ・ザイガー『小さな家、可愛い家』こんな家に住みたい!という妄想をしたい人へ。

こんばんは。

今日はもう既に眠いです。okapです。

 

今日は、小説じゃなくて、写真集のようなものを紹介します。

『小さな家、可愛い家』

世界の一流建築家が設計した、タイニーハウスばかりが紹介されている本です。

外装・内装の写真のほかに、間取りも書いてあって、わくわく。

 

小さい頃、よく広告の間取りに自分の理想の部屋を書いて遊んでいました。

ここにベッドを置いて、ここに本棚を置いて……。

素敵な家で暮らす日々をひとり楽しく妄想していました(ひとり遊びは得意)。

 

あとは、土曜日の朝にやってる「渡辺篤史の建物探訪」も大好きです。

今はテレビを持ってないので見てませんが、実家にいた頃は毎週見ていました。

懐かしい……。

 

この本を気に入って、何度も繰り返し読むのも、その延長線上でしょう。

 

なにが心をくすぐるって、その小ささ!

全部で35の家が紹介されているのですが、ページをめくるにつれて、だんだん小さく・狭くなっていくんです!

美しい景色の中に佇む、小さな、可愛い家。

なんて素敵!!

どの家も、狭さ・息苦しさを感じさせない趣向がこらしてあって、飽きません。

 

私のお気に入りは、ミニカーハウスです。

名前の通り、車輪がついていて、気が向けばどこにでも移動できます。

わずか9平方メートルでありながら、ベッド・キッチン・本棚があります。

外装もとっても可愛いんです!

この家で暮らす妄想を何度も何度もしています。

お風呂とトイレがないのが唯一の欠点かなあ。お風呂は銭湯に行くにしろ、トイレがないのは致命的かしら。

 

以前書いたように、ひとつのところに留まりたくないという思いも根底にあるんでしょうね。

トレーラーハウスも憧れます。

 

どんなに疲れていても、見るだけで癒されるものがあるのは大事なことだなあと思うのです。

 

眠いのでまた明日!

明日は三時間だけ働いたら自由の身じゃー!

 

 

 

小さな家、可愛い家 世界の一流建築家による傑作タイニー・ハウス34軒

小さな家、可愛い家 世界の一流建築家による傑作タイニー・ハウス34軒

 

 

 

 

【第9話】高楼方子『十一月の扉』少し背伸びしたい中学生へ、懐かしい気持ちを思い出したい大人へ。

こんばんは、okapです。

胃がキリキリと痛いです。拾い食いはしてないんだけどなあ……。

 

今日紹介する本は、高楼方子『十一月の扉』です。

初めて読んだのがいつなのか、覚えていないぐらい前に読みました。

確か、小学校高学年かな。

そこからずっと、中学生の間も、私のバイブルでした。

文庫本を調べたら、平成18年11月1日発行。

今は、平成30年。ということは、12年前!

微妙に鯖を読みましたかね。小学校と中学校の境目ぐらいですね。まあいいか。

ずいぶんと年季が入ってきましたが、きっと一生そばに置いておくでしょう。

そして、きっちり11月に発行してるんですね。そりゃそうか。

 

 

主人公は、中学生の爽子(そうこ)。

ひょんなことから、「十一月荘」という素敵なお家で暮らすことになります。

住人は、老婦人、バリバリキャリアウーマンの建築家、小学1年生の女の子とその母。

そこで、爽子は、のどかな、そして、ちょっぴり背伸びした日々を送ります。

 

これだけだと、なんだかどこにでもありそうな気がしますが、個人的に爽子がすごいと思うのは、その行動力!

どちらかといえば大人しい女の子ですが、彼女が十一月荘を見つけたきっかけは、家から双眼鏡でのぞいて偶然見つけたから。その外装にすっかり魅せられてしまった爽子は、休みの日にわざわざ自転車で向かいます。どうしても、行ってみたいと思ったから。

その日は、家まで行って、庭先で少し老婦人(閑さん)と立ち話をしただけです。

しかし、話はここから。

家族から、転勤が決まったと言われて、爽子が選択したのは、「十一月荘」に二学期の終わりまで、住まわしてもらうことでした。

 

素敵なお家で!

自分の部屋を与えられてシェアハウス!

うらやましい!!!

 

そこで、爽子は、家族と離れて暮らし始めます。

出会うはずがなかった人と、共に暮らす不思議。

イムリミットが決まっている、かけがえのない時間。

特別なことをしようと、爽子は、物語を書き始めます。

 

身の回りの、そして、小学1年生の女の子(るみちゃん)のぬいぐるみを登場人物に見立てた物語です。

爽子は、それをるみちゃんに読んで聞かせます。

 

そして、もう一人の読者が、ひとつ年上の男の子、耿介(こうすけ)。

涼しげな目元の、毅然とした少年。なおかつ、文学にも親しみ、爽子の物語を「たのしい川べ」まで「巨人族の足で一歩」と評します。

なんとまあ、素敵な少年や。

(ちなみに私は「たのしい川べ」を読んだことがないので、本当に一歩なのかは判断しかねます。実家にあった気がするし、探してみようかな)

 

 

案の定、私はこの作品も、「爽子は私だ」と思いながら読んでいました。

だって、身に覚えのある感情が、そっくりそのまま出てくるんだもの。

 

とくにお気に入りなのが、物語終盤の、この部分です。

 

 

ああ、どんなにどんなに見たかった姿。いつかどこかでこの曲を聴いたなら、私はきっと必ず、この姿を、この横顔を、思い出すだろう、おばあさんになっても……。

 

 

なんて、うつくしい文章でしょう。

何度読み返しても、覚えてしまっていても、ここを読むたびに、心臓をギュッと鷲掴みにされます。

 

この本を読んで以降、私は、たびたびこういう光景に出会いました。

ピアノはずっと習っていましたし、高校からはトロンボーンも吹いていたので、尚更かもしれません。

 

曲に紐付いて、思い起こされる思い出がいくつもある。

そのたびに、当時の感情まで、ありありと思い出す。

 

幸せな時間だったなあと、今になって思います。

 

一昨日と、昨日と、山野ビッグバンドジャズコンテストだったのですね。

あのとき演奏した曲の数々、抱えていた思い、あたたかくてアホな思い出たち。

心が少し、苦しくなります。

なぜでしょうね。幸せな思い出なのにね。

 

 

十一月の扉 (新潮文庫)

十一月の扉 (新潮文庫)

 

 

【第8話】原田マハ『奇跡の人』人の可能性を信じることができない、信じたい人へ。

こんばんは。

台風のため珍しく夕方に帰宅しましたが、テンションが上がりすぎてご飯を食べすぎたため寝てました。okapです。一旦起きましたが、結局いつもと変わらん時間や。

 

今日は、原田マハつづきで『奇跡の人』を紹介します。

 

 

その顔を、いつも、太陽のほうに向けていなさい。

あなたは、影を見る必要などない人なのだから。

                                                                ーーヘレン・ケラー

 

言わずと知れた、三重苦を乗り越えた人・ヘレン・ケラー。彼女の言葉からスタートします。

 

舞台は津軽

岩倉使節団に僅か9歳で参加した去場安(さりば あん)。

彼女は、22歳までをアメリカで過ごし、最先端の教育を受けます。当時の日本の女子としては、かなり異例なことです。

家長制度がまだ強く残っていた当時、結婚して子どもを産むことが唯一求められた役割でした。

自分の受けた教育を、日本の子女に行き渡らせるーーそう思って帰国した安は、ショックを受けます。アメリカの教育を身につけた自分にさえ、父親が縁談を持ち込んだことに。

相手は、伊藤博文でした。

安はこっそり、結婚を断る手紙を書きます。

無事、縁談は回避できた安ですが、自分が望んだような女子教育のための活躍の場は日本にはなく、仕方なく華族の婦女子に英語やピアノを教えていました。

 

 

弱みを強みに変える教育。

貴賎の別なく、いかなる女性にも開かれた教育。

そんな教育に携わりたい。

 

 

そんな思いを胸に抱きつつ、もどかしく過ごしていた安のもとに、伊藤博文から手紙が舞い込みます。

津軽に住む、地元の名士が、長女の教育に悩み、苦しんでいると。

 

一つ。れん嬢は、盲目です。まったく、見えません。

二つ。耳が聞こえません。

三つ。口が利けません。

いかがでしょうか。

そんな少女の教育に、あなたは、はたして、ご興味をもたれますでしょうか?

 

かくして、安は津軽に旅立ち、介良れん(けら れん)と出会います。

汚い蔵に閉じ込められ、けものの子のような扱いを受けていた、れん。

けれど、安は彼女を一目みた瞬間に、光を感じます。

 

かすかにめまいを覚えるほど、まぶしい少女だった。強烈な光を放つ人だった。

 

そして、他の誰もが諦めていた、れんの教育に着手します。

れんの可能性を心から信じて。

 

 

 

そこから、安とれんの怒涛の日々が始まるのですが、ここまで聞いて、思い当たる人物がいますね。

津田梅子です。

当時最年少(6歳)で岩倉使節団の一員として渡米した梅子。

17歳で帰国し、日本の女子教育に関わりたいと思っていたこと。

伊藤博文の紹介で、華族女学校などで教鞭をとるが、自分自身の学校をつくる夢をもちつづけ、アメリカに再留学します。

この際、梅子はヘレン・ケラーも訪ねています。

そして、再び帰国し、念願の自分の学校をつくるのです。現在の津田塾大学ですね。

 

安の人物像というのは、この津田梅子と、サリバン(ヘレン・ケラーの先生)をモチーフにしているのではないかと思われます。

 

 

と、これだけでは、この物語は終わりません。

もう一人、重要な人物が登場します。

ボサマのキワです。

ボサマというのは、津軽地方の旅芸人を指します。その多くは、盲人男性で、ときには女性や子供も一行に加わります。三味線を弾きながら、各戸の勝手口などで民謡を唄い、米や小銭を恵んでもらうそう。

キワは、れんと同じ年頃の少女でした。目は見えません。

お喋りするのではなく、二人はお互いに触れ合うことで、仲良くなっていきます。

同年代の、同じ盲目の少女(しかも、キワは聞こえるし喋れるので、れんより習得がはやい)と共に学ぶことで、れんは急速に成長していきます。

 

 

全編において、ヘレン・ケラーとサリバンの色が濃いこの物語のなかで、キワは異色です。

解説にもあるように、ヘレン・ケラーとサリバンは二人で話が完結するところを、この小説では、キワという同じ年頃の少女を登場させています。

そして、このことが、物語終盤の大きな感動につながっていきます。

 

 

きっと、読むたびに、何度も違う発見があるのでしょう。

とても、懐の深さを感じる物語でした。

 

 

 

奇跡の人 The Miracle Worker (双葉文庫)

奇跡の人 The Miracle Worker (双葉文庫)

 

 

 

 

 

 

 

 

【第7話】原田マハ『フーテンのマハ』旅に出る妄想をしたい人へ。

こんばんは。

今日の夜ご飯は、元上司に誕生日プレゼントにもらった無印良品のチンするカレー(非常食)でした、okapです。

 

皆さんは、子どもの頃の夢を覚えていますか。

母親からの証言を元にすると、私が一番最初に言い始めた将来の夢は、「うさぎ」だそうです。

幼稚園にいたのが可愛かったんでしょうか。

今まで数多の将来の夢を経てきましたが、初回でイキナリの無理ゲーです。

諦めろ。

 

幼稚園の卒園時の将来の夢は、ケーキ屋さんでした。

カタカナのケがうまく書けなくて、ことごとくワーキに見えた気がする。

ちなみに最近、ワとクを上手く書き分けるのめっちゃ難しいなと思ってます。

ワクワクとか史上最高にゲシュタルト崩壊する。

 

中学生の頃、カウンセラーとか精神科医になろうかなと思った時期があります。

人の相談にのることが多かった(気がする)し、向いてそうかもと。

 

ですが、やっぱりやめようと思って諦めました。

理由は、「ずっと、毎日同じ場所に行かなきゃいけないの嫌だな」

 

現在、カウンセラーではありませんが、毎日同じ場所に出勤しています。

 

 

。。。

 

 

ということで、旅をするように生きたい私が、羨ましさで歯ぎしりをした本がこちらです。

原田マハ『フーテンのマハ』

なんと原田マハ、自宅にいないことが多すぎて、編集さんや知人から「今どこにいるの?」と枕詞のように聞かれるそう。

そして、自宅と答えると「なんでですか」と言われる。

もはや、フーテン。

ということで、原田マハがあちこち旅をした記録が書かれています。

 

うらやましいいいいいい。

私も青森に行って、木村秋則さんのりんごでつくったスープ飲みたいいいいい。

なにも考えずに列車に揺られたいいいいいい。

 

取り乱しましたね。

こんなことを言いながら、青春18切符も使ったことがないぐらいフーテンレベルが低いので、もっとレベル上げてから出直します。

 

一ヶ月ぐらいかけて、青春18切符で日本一周したいなあ。

一ヶ月で足りるのかしら。

 

 

 

フーテンのマハ (集英社文庫)

フーテンのマハ (集英社文庫)

 

 

 

【第6話】白川紺子『後宮の烏』逃れられない定めから、少しだけ楽になる方法。

おはようございます。

こんな時間帯に更新するのは珍しいですね。okapです。

昨晩は、勧められた本を読んでいたら寝入ってしまいました。

小説ではありませんが、読み終えたらこちらもブログに書きますね。

 

出勤前のわずかな時間でタイムアタックです。

今回は、白川紺子『後宮の烏』

最近、烏がモチーフのお話をよく目にする気がします。

阿部智里の八咫烏シリーズとかね。こちらもまた、折をみて書きましょう。

 

 

さて、皆さんは後宮という場所をご存知でしょうか。

帝のお妃候補がたくさん住むところですね。そこで、女人たちはバチバチと火花を散らし、己の生存と権力の増大をかけて闘います。

ただ、今回の主人公は、後宮に住んでいるとはいえ、少し事情が異なります。

 

 

後宮の奥深く、〈烏妃〉と呼ばれる妃が住んでいる。

その妃は、妃でありながら夜伽をすることのない、とくべつな妃だった。

 

 

書き出しのこの時点で期待MAXですね。

 

 

後宮で生きながら、けして帝のお渡りのない妃。ーーのはずだったのだが。

 

 

ということで、本来は出会うはずではなかった、烏妃と帝が出会います。

烏妃には特殊な力があり、それを頼りに来たのです。

今までたった一人で生きてきた烏妃(名前を寿雪といいます)ですが、様々な件に首をつっこみ、解決していくうちに、何人かと交流が生まれてしまいます。

烏妃というのは孤独であるべき存在なのに、それでよいのかと悩みつつ、断ち切れない寿雪。

一方で、帝(高峻)は、烏妃という謎につつまれた存在・概念に迫ろうとします。

果たして、二人の、周囲の関係性はどうなっていくのか。

 

 

とても描写がうつくしい小説です。

そして、最後に二人がくだした結論に、少しだけ、救われる気持ちがします。

 

白川紺子という作家にこの本で初めて出会いました。

ほかの著作も読んでみたい。

 

 

 

後宮の烏 (集英社オレンジ文庫)

後宮の烏 (集英社オレンジ文庫)

 

 

 

 

【第5話】ダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』人間というものに失望している人へ。

こんにちは。

今朝はなぜか4時間で目が覚めて、そこから熟睡できずに仕事に行きました、Okapです。

おかげ様で、今とても眠いです。

今日はノー残業デーだったので、22:30に退社して、ルンルンで帰宅しました。

(念のため言っておきますが、仕事は昼からです)

初めてコンビニで、レンジでチンするハンバーグを買いました。

絶対自分で作るより美味しい。

 

 

今日の本は、ダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』です。

読んだのは去年だったかしら。私が持っているのは、小尾芙佐訳のものです。

 

この気持ち、分かりますかね。本好きを自称するあまり、なぜか有名作には手が出せない症状をしばしば発症します。

特に明治時代の文豪。たとえば、泉鏡花は、美しい名前だなと思いますが、読んだことはありません。

 

でもね。本は強制されて読むものではないと思うんです。

読んでみたいと思って、手が伸びたときが読みどき。

いずれ出会う日をワクワクしながら待つとします。

ひたすら本を紹介しているこのブログと、矛盾しているような気がしますね?

私もそう思ったので、「是非手にとってください」などの言葉を封印するとしましょう。

どんなに心が動かされたか、私が声を大にして主張するだけにします。

 

 

話が逸れましたね。

そうやって、なぜか読まずにきた『アルジャーノン』を昨年なにかのきっかけで手に取りました。

 

 

 

ぼくの名まえわチャーリイゴードンでドナーぱん店ではたらいててドナーさんわ一周かんに11どるくれてほしければぱんやけえきもくれる。

 

ビークマン大がくのちてきしょーがいのせえじんせんたー

ぼくわせんたーにわ周に3かい仕ごとがおわてからべんきょおしにいっています。

 

 

 

小説は、チャーリイの「けえかほおこく」で構成されています。

なぜチャーリイは文章を書くのが苦手なのに「けえかほおこく」を書いているかというと、大学の先生が実験で頭をよくしてくれるから。

手術をしたチャーリイは、少しずつ、頭がよくなっていきます。

同じ手術を受けた、ねずみのアルジャーノンと一緒に。

以前は分からなかった会話を聞き取れるようになり、使えなかった機械を自力で扱えるようになり。

加速度的に広がる世界に戸惑うのは、チャーリイばかりではありません。

周囲の人々も、同じぐらい、もしくはそれ以上に混乱していきます。

チャーリイが初めて知る世界、初めて知る感情。

 

 

これ以上のあらすじを書くと、感動を壊してしまうので書けません。

感動?

私はこの本を読んで感動したのでしょうか。

 

 

人の感情には名前があります。

うれしい

かなしい

たのしい

せつない

数え上げれば、キリがありません。

 

この本を最後まで読んで、私は涙が止まりませんでした。

でも、自分が何故、泣いているのか、理由が分かりませんでした。

感情が、溢れて止まらないのに、それがいったい、どんな感情なのか、自分で説明がつかなかったのです。

 

 

ワケが分からないなりに、私は納得しました。

 

これこそが、小説の価値であるのではないか、と。

 

 

もしかしたら、私も成熟すれば、この感情に名前をつけられるのかもしれません。

しかし、今はだた、こうも心を揺さぶってくれた、この小説に感謝します。

 

 

 

 

【第4話】柚木麻子『ねじまき片想い』自分の心に正直に。一歩踏み出したい人へ。

こんばんは。okapです。

オカピっていう動物いるよね。別に関係はないです。

 

先ほど『れんげ荘』のブログをアップしたあと直ぐさま読み始めたのが、『ねじまき片想い』です。

 

今日本屋さんで買った本はもう一冊あるんだな〜。

本屋でピンときた本はすぐ買うくせに、割と積ん読にしがちな私にしては、こんなに早く読むのは、割と珍しいです。

 

基本的に、人生から逃避したいんだよね。たぶんね。

本を読んでいるあいだは、その世界に逃げ込むことができます。

それは、たぶん、おもちゃも一緒。

 

 

『ねじまき片想い』の主人公は、富田宝子、28歳。

ガーリーな見た目は、10代に見えるほど。

玩具メーカーの商品企画室で働くエース。

自分の世界観をもち、次々とヒット商品を生み出す一方で、恋愛に関しては、からきしである。

デザイナーの西島に5年も片想いを続ける、「片想いのプロ」

その西島が、困ったことにトラブルに巻き込まれる体質なのだ。

それを察知した宝子は、たちまち探偵に変貌。先回りして解決に導いてしまう。

 

西島に片想いしていることは、社内にはバレバレ。

ルームシェアをしている玲奈には、いつも発破をかけられる。

彼女の言葉が本当にスカッとしており、かっこいい。

もし駄目だったら……と怖気付く宝子に対して、

「行動しない人間は、そういうことを不安がる資格もないんだよ」とぴしゃり。

ただ、そんな言葉を受け取ってもなお、宝子の情熱は、事件解決に向かってしまう。

付き合ってもない男のために奮闘する宝子のことを、玲奈はこう揶揄している。

「完全に自家発電だね。自分でねじまいて自分で走るゼンマイおもちゃって感じ」

 

 

この小説は短編集としても読むことができる。

毎回、宝子が解決のために(その努力が少し明後日の方向を向いていたとしても)奮闘するのはそうなのだが、少しずつ、西島との関係が変わっていく。

本来は自分の世界を持ち、頑固なところもある宝子だが、西島の前ではすっかり大人しくなり、いつもの自分をさらけ出せない。

そこから、一歩だけ、踏み出したところで物語は終了する。

 

 

ブログタイトルにある「自分の心のねじを巻いてくれるのは、自分だけよ」という言葉のほかにも、この物語には、素晴らしい格言が、様々な人間模様が詰まっている。

でてくる登場人物が、脇役に至るまで、なんとも個性的で、立体的で、おもしろいのだ。

 

個人的には、若き西島の言い放った言葉にグッとくる。

商品企画で煮詰まる新人時代の宝子へ向けた言葉だ。

ーー別に全員にウケなくてもいいんじゃないの。

ーーたった一人を思い浮かべて作ればいいんじゃないの〜?例えば君の家族とかさ。万人受けするものより、俺はそういう気持ちの入ったものが好きだな。

 

全ての創作物に通ずる言葉だと思う。

願わくば、このブログも「たった一人」に届きますように。

 

 

ねじまき片想い (創元推理文庫)

ねじまき片想い (創元推理文庫)