風早小夜子のブログ

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不器用でカッコ悪い自分らも、わるくないなと思いたいときに。津村記久子「これからお祈りにいきます」

こんにちは。

先週は何やら朝から出勤の日が多く、あまり本は読めていません、okapです。

 

唯一読んだのが、津村記久子「これからお祈りにいきます」

なんだろう、とても不思議で、でも地に足のついた物語でした。

 

 

 

 

二篇の物語が収められています。

サイガサマのウィッカーマン

バイアブランカの地層と少女

 

ウィッカーマンとは、ケルトドルイド教が由来だと思われます。

枝で巨人をつくり、その中に生贄を入れて焼くやつです。

ただ、サイガサマの場合は、動物や人間を入れるのではなく、「取られたくない」部分を工作して入れる風習です。

 

このサイガサマの色んな噂話がなんというか、リアルで憎めないんですよね。

・間違えて違うところ持っていった

・人体に二つあるもの(眼球や腎臓)を持ってくのは、複数あるぶんは取っても大丈夫だろうという判断

・最近は精度が上がっている

・「ダメな子だから」と言われる

 

畏れの対象である神様……というよりは、近所の放っておけない子、みたいな扱いをされています。

なんだかかわいい。

終わり方がとても愛おしいなと思います。

愛が溢れている。

 

 

 

バイアブランカの地層と少女は、リアル京都の大学生という感じ。

なんでか分からんけど、今これをしなあかん気がする!

という部分の描写が素敵。

 

 

どちらの話も、自分のことではなく、他の誰かのために、一生懸命祈る。

不器用で、側から見るとちょっとカッコ悪くて、そこがとても愛おしい主人公たちです。

 

人間もわるくないな、と思える本でした。