【第13話】沢村凛『黄金の王 白銀の王』圧倒的な大きさに触れたい方へ。歴史小説が好きな方にも。
こんばんは。
今日も今日とて、こんな時間です、okapです。
最近、本を読むのが楽しくて仕方がない。まるで中高の頃に戻ったかのような。
本を買ったり、紹介するたびに思うのだが、本ってこんなに安くていいのかしら。
たった、1000円弱で、このさきの人生を支えるものに出会ってしまってよいのかしら。へんなの。
へんなのと思いながら、今日も、その幸福を享受します。
さて、今日紹介するのは、沢村凛『黄金の王 白銀の王』
読んだのは大学生の頃だろうか。
初めて読んだときの衝撃を、まだ覚えている。
こんな骨太な、歴史の流れを生み出すことのできる人がいるのかと。
憎み合い、殺しあってきた鳳穐(ほうしゅう)と旺廈(おうか)の一族。
もとは、祖先を同じとしながら、血で血を洗う争いを繰り返してきた。
しかし、鳳穐の頭領である、ひづち(まさかの漢字変換が出来ず。のぎへんに魯です)は、旺廈の血を最も濃く受け継ぐ薫衣(くのえ)に、あることを持ちかける。
それは、国のために、二つが一つになること。
現在、国は鳳穐が治め、旺廈は各地でひっそりと暮らしている。
旺廈であることを公言すれば、‘旺廈狩り’の対象になり、殺されてしまう。
薫衣以外の人間で、前頭領の血を継ぐ者はいない。
蜂起しようにも、薫衣の存在を無視できない。
旺廈を押さえつけるには、薫衣を生かしたまま監禁しておくのが一番都合がいい。
なのに、ひづちはそうしなかった。
「旺廈を根絶やしにしろ」という父の遺志、「殺せ」という周りの声、「殺したい」という自分の思い、それらを無視して、一つになる道を選んだ。
もちろん、平坦な道のりではない。
そもそも、ひづちも、薫衣も、そう簡単に容認できる話ではない。
お互い殺しあってきたのだ。お互いがお互いの仇なのだ。
だが、それを頭で、理屈でねじ伏せ、二人は共に道を歩むことになる。
敵からも、味方からも、反対され、蔑まれ、理解されない荊の道だ。
失敗は許されない。
剣の上に立ち、針で糸を通すような危うさで、二人はじりじりと進んでいく。
反乱が起こることもある。謀反が起こることもある。
それでも、歩みを止めず、進み続ける。
これは、フィクションであり、ファンタジーだ。
鳳穐も、旺廈も、現実には存在しない。歴史上の、どこにも存在しなかった。
架空の作り話だ。
でも、なんだこれは。
なんだこの、圧倒的なリアリティは。
なんだこの、圧倒的なスケールは。
あまりの大きさに、しばらくの間、呆然としていた。