本の処方箋「おくすり(本)だしておきますね」

放っておくと10時間ぐらい本を読み続ける女子が、悩みごと別に、本の処方箋を出すブログです。漫画も好きです。

【第1話】辻村深月『凍りのくじら』自分はどこにも行けない、何もできないという閉塞感のある人へ。

 こんばんは。okapです。

自分はどこにも行けない、何もできないという閉塞感を抱えている人へ。

辻村深月『凍りのくじら』を紹介します。

 

主人公は高校生の芦沢理帆子。

本当は、読書が好きだし、なによりドラえもん藤子・F・不二雄(作中では、理帆子は敬意を込めて藤子先生と呼ぶ)を愛しているが、普段はそれをおくびにも出さない。

進学校とされる高校に通う生徒には珍しく、夜遊びを繰り返す。しかし、高校では派手な顔立ちのため、遊びの場では頭の良さのため、自分は異物であると思っている。

どこにも居場所がないくせに、どこにでも行けるような顔をして、あちこちを渡り歩く。でも、そこには諦めしかない。

 

この本を初めて読んだ私も高校生でした。

そして、ここまで強烈に「これは自分だ」と思った本はありませんでした。

 

小説を愛するあまり、虚構に対する思い入れが強い理帆子。

小説のなかで人が死ぬより、現実にする怪我の方が痛いに決まってる。でもそう思えない。

周りの人に溶け込めない自分。周りを馬鹿にする自分。

 

そういった、自分の汚い部分を重ねていました。

そして、物語の終盤にもたらされる救い。

汚い部分も全てひっくるめて、まるごとあなたが愛おしいんだという力強く、あたたかいメッセージが提示されます。

 

あなたの描く光はどうしてそんなに強く美しいんでしょう。

ーそれに対する私の答えは決まっている。

   暗い海の底や、遥か空の彼方の宇宙を照らす必要があるからだと。

 

物語のなかで出てくるこの言葉は、辻村深月の創作の姿勢そのものに思えてなりません。

 

自分への諦めや、閉塞感を感じている人に、手にとっていただきたい一冊です。

 

辻村深月の作品群はそれぞれリンクしており、理帆子も度々他の作品に登場します。

そんな心憎い仕掛けもたくさん凝らされているので、是非読んでみてください。

 

 

凍りのくじら (講談社文庫)

凍りのくじら (講談社文庫)